大企業の終身雇用制度が崩壊しつつある今、子供の将来を心配する親も多いでしょう。そういった方の多くは自分自身で稼ぐ力を身に付けてほしいと考えているはずです。私もその一人です。
(恥ずかしながら私の様に)何の疑問も持たずに「みんなが大学まで行ってるから行くのが当たり前」とか「大学まで行ったら普通に就職するのが当たり前」とか思考停止状態で進んでいったら、子供の人生どうなるかわかりません。そのため、子供には小さいうちからビジネス感覚を身に付けてほしいと考えています。
そんなことを考えていると、以前Twitterで話題になった佐藤ねじさんを思い出しました。ねじさんの息子さんは小学校1年生の時に家庭内起業をされています。詳しくはこちらの記事にかかれているので、見てみてくださいね。
そこで今回はMBAを取得した私が、この教育のスゴさと真似する上での親のスタンス(注意点)について解説します。子供の学びを最大限に広げるために大切なことを紹介しますので、見てみてください。
「小1起業家」教育のスゴい所 5選
最近ねじさんを真似て「子供に家でコーヒーショップ始めさせた」といった人も増えてきましたし、「お金の教育を義務教育に!!」が合言葉(?)の税理士・大河内薫さんも「家庭内起業は子供のお金の教育に良い」とおっしゃっていました。が、何も考えずに「じゃあうちも!」と始めてしまうと、子供の学びが薄~くなってしまう可能性があります。
そこで、なぜこの「小1起業家」教育がスゴいのかをきちんと押さえておくことが重要です。
一言で言うと首尾一貫して甘えを許さなかったところがこの教育のスゴさだと、私は思っています。具体的には以下5点です。
- 投資を経験させたこと
- 自分自身で考えさせたこと
- 借金をさせたこと
- クオリティに妥協を許さなかったこと
- 「予想外」を体験させたこと
1. 投資を経験させたこと
この教育の始まりは「おこづかい講座」から始まります。「おこづかい講座」には100円を払ってもらったそうです。息子さんにとって100円は毎月のお小遣い(=収入)にあたり、非常に高価ですが、この先の利益につながる重要な投資になりました。
お金の使い方である消費・浪費・投資の内、息子さんはおそらく消費・浪費はしたことがあったでしょう。が、投資はしたことがなかった(もちろん学校での勉強する時間は投資の一つですが、子供にはその認識はない)はずなので、身をもって投資させたことは非常に子供にとって良い経験だったはずです。そしてこの100円の講座を受けなければ、その後のカフェでの利益は生まれなかったわけですから、投資がいかに重要であるかを身をもって体験できたでしょう。
実際のところ、こうした投資は大人でも出来ていない人がいます。本を買って勉強するとか、将来のために資格を取得するとか。そうした投資のできない人と言うのは、目先の収支にしか目が行かず「未来への投資」という概念がありません。その理由は、今までに投資経験がないもしくは、投資が実を結んだ経験がないからでしょう。そのため子供のころからの投資経験、その投資が投資額以上の収益を得た経験ができたことは、息子さんの今後の人生においても大きなプラスになるといっても過言ではないでしょう。
2. 自分自身で考えさせたこと
もしかしたらねじさんは、カフェならば息子さんでも出来そうだと事前に想定していたかもしれません。自分が親の立場だったら「家でカフェでもやってみたら?そしたら1杯200円で買ってあげるよ」なんて言ってしまいそうですよね。しかし彼はいきなり結論を提示するのではなく、ターゲットのニーズを自分自身できちんと考えさせることから始めました。
誰をターゲットとするのか、ターゲットの困りごと・喜ぶことは何か…この思考はビジネスを始める際には必須です。例えばUber eatsはターゲットの「マック食べたいけど、ちょっと遠いんだよなぁ」というお困りごとを解決するサービスであるわけだし、ルンバはターゲットの「代わりに掃除機かけてくれる人がいたら嬉しいんだけどな」という願いをかなえる製品なわけです。人はお困りごとが解決したり、やってもらって嬉しい事には喜んでお金を払います。これがビジネスの基本です。
当然この考え方は、息子さんがいつか本当に起業しようとした時にも絶対に役に立ちます。まさにこの講座はれっきとした起業講座だったわけです。
更に、コーヒー豆の仕入れる種類を決めたり、作れるコーヒーの量を計算したうえで1杯分の価格を計算したりしたとのこと。これらは実際にビジネスをやる際には絶対にやることですね。しかし普通の親なら「まぁ、1杯200円くらいなら買ってもいいよ」とか、親(顧客)視点で勝手に適正な価格を提示してしまいそうですよね。実際にビジネスを起こすときに検討することは一通り息子さん主導で経験させた、というのがこの教育のスゴい所だと思います。
3. 借金をさせたこと
これは脱帽でした。親の立場だと「仕入れにお金が必要だな。じゃあ開業費をあげるからこれを使いなさい」とお金を渡してしまいそうです。しかし実際のビジネスだったらどうでしょうか?開業費を出してくれる人なんていませんよね。手持ちのお金が足りなければ多くの場合、借金をします。
大人でも借金は「ダメなこと」、「怖いもの」だと思っている人が一定数います。ドラマとかで借金の取り立てに追われるシーンがあったりするからですかね。
たまに「借金は怖いので一括で家を購入しました」という人がいて驚かされます。もちろん金利の高い借金はするべきではないです。が、借金自体は一概に悪いものとは言えません。例えば住宅ローンの金利はかなり低いですから、3000万円の家を一括で買うより、500万だけ払って残りの2500万円を投資信託などに投資した方がトータルのリターンは高かったりします。そのためお金持ちほど借金をうまく利用するともいわれています。
話が脱線しましたが。恐らく子供からすると「借金」なんて裏技は知らなかったでしょうから、さぞ驚いたことでしょう。しかし実社会では裏技でも何でもありません。借金をしてビジネスを始める、つまり赤字からのスタートというのはごく普通のことです。どの会社もその後きちんと黒字転換できるかが問われるのです。起業の際に借金を体験させたのは、本当にスゴいです。
お子さんがもう少し大きければ、貸付けの金利も設定するとよりリアリティが増して良いかもしれませんね。
4. クオリティに妥協を許さなかったこと
美味しいコーヒーを入れてもらうために、ミルの使い方やお湯の量、お湯の注ぎ方などをレクチャーしたとのこと。しかもコーヒー豆は高級!コーヒーのクオリティにも妥協を全く許さなかったところがスゴいです。
例えば同じコーヒーでもインスタントコーヒーを使った場合。店員が子供なら「まぁ、子供だから仕方ない。買ってあげるか。」と妥協して買うかもしれません。でも店員が子供じゃなかったら1杯200円で買いたいと思いますか?自分で入れてもそんなに手間じゃないし、大して美味しくもないから200円は高いな、と思ってしまいますよね。なんならインスタントじゃなくてもっと美味しいコーヒーが飲みたいから自分で淹れよう、とか、もっと安いコーヒーをコンビニで買って来ようとか考えますね。そうして競合に顧客が流れていくわけです。
ここで、もう一度ターゲーットのニーズを思い出してください。ニーズは「美味しいコーヒーが飲みたい、けどコーヒーを作るのが面倒。代わりに誰か作ってくれないかな。」ですよね。言うなれば、このビジネスにおいてクオリティの追求は必須なのです。結果、親(客)も本当にHAPPYになるし、子供も売り上げが上がる上に本当に親が喜んでいる姿を見られてHAPPY。Win-Winです。
ビジネスはWin-Winでないと成り立ちませんよね。この基本を体感させたことがスゴいです。
5. 「予想外」を体験させたこと
きちんと計算して始めたはずでしたが、開店直後は失敗や間違いなどで予定通りの稼ぎにはならなかったそうです。もしそんな状態でしょんぼりしているわが子がいたら「そうかそうか、頑張ったのにな。じゃあ今回は豆の量少なめでもいいぞ」とか言ってしまいそう(笑)そんな対応しないのがスゴい所。
ビジネスにおいても予想外の事態はよくあるでしょう。すべてが計画通りうまくいくわけではないです。じゃあどうすればいいかな?例えばコーヒー1杯の価格が200円だと赤字になる可能性があるから250円にしよう。いや、でも250円にしたらお客さんが納得するかな?250円にする代わりに小さなチョコレートを付けようかな、とか。頭を働かせて、改善していく必要がありますよね。
改善策を考えるのはまだ難しいかもしれませんが、予想外な事も起きるのだと経験しておくことで、予想外を想定しておけるようになります。これもビジネスでは重要なことですね。
「小1起業家」をマネる際の親のスタンス
ここまでは「小1起業家」教育のスゴさを解説しました。これらのポイントから、この「小1起業家」を真似する場合に親はどのようなスタンス(注意点)で臨むべきかについてまとめます。親のスタンスは以下です。
- 何を学んでほしいかを明確にする
- 自分自身で考え、決めさせる
- 子供扱いしない
何を学んでほしいかを明確にする
これが最重要ポイントです。
「小1起業家」で子供が学べる事については後述しますが、そのうち部分的に学んでもらえればよいのであれば、必ずしも以下2つ「自分自身で考え、決めさせ」なくても「甘えを許さ」なくてもいいです。幼稚園生なので学びを減らしてもいいからもう少し簡単にアレンジしたい、などという考えもあるでしょうから。
しかし学んでほしかったのにアレンジしたせいで学ばせられなかった、といった事態はあまりに勿体ないので、この教育でお子さんに何を学んでほしいかを明確にしておくことをお勧めします。
自分自身で考え、決めさせる
私たち親は、子供が自分の言うことを聞いてほしい、自分の考えている通りに動いてほしいという気持ちを持ってしまうことがあります。しかし答えを与えてはいけません。重要なのは自分自身で考えさせること。
例えば「お金を増やしたいの?じゃあ…パパもママも毎日コーヒー飲むから、お家でコーヒー屋さんでもしたら?」なんて言ってはいけません。ここは骨が折れる思いをするかもしれませんが、大切なところです。
例えばこんな感じでしょうか。「例えばおもちゃ屋さんに行きたいとき、電車に乗るよね?歩いても行けるけどお金を払って電車に乗るのはなんでかな?それは…電車は、歩くと時間もかかるし疲れちゃうな、という私たちのお困りごとを解決してくれるからだよね。だから鉄道会社は人を運んであげる代わりにお金をもらえるんだよ。それと同じで、パパやママが喜んだり、困っていることを解決出来たら、助かった分のお金を払ってもらえると思うよ?〇〇ちゃんだったら何ができるかな?〇〇ちゃんが何をしたらパパやママを喜ばせたり、困りごとの解決ができるかな?」
とにかく考えるプロセスがすごい大事。そして自分で決めることがすごい大事。
「小1起業家」でも終始そうだったはずです。まずニーズを考えるところから始まり、コーヒーショップをやることを決め、ニーズを満たす豆を決めて購入し、コーヒーの売り単価を決めていました。自分自身で考えて納得して決めたからこそ、濃い学びにつながったといえます。
子供扱いしない
親はどうしても「子供だから」と甘えを許してしまう部分があるでしょう。しかしこの甘えは、学びに関して逆に悪影響となるので、注意が必要です。
ねじさんの他の記事を読んでいても素晴らしいと感じるのは、子供を子ども扱いしていないことです。「小1起業家」に関しても「子供だから」という妥協を一切していないことで、子供は多くの学びを得られました。100円を投資させて講座を開いたこと、開業資金を借金させたこと、コーヒーのクオリティに妥協を許さなかったこと、予想外が発生しても救済措置を取らなかったこと…。一見厳しいように見えますが、学びを最大限与えるための愛のムチです。
「小1起業家」で子供が学べる事
上記では親のスタンス次第で子供に与えらる学びの大きさが変わることについて説明しました。しかし「そもそもこの教育で、子供は何が学べたんだっけ?」と疑問をお持ちの方あてに、この教育を行うことによる子供の学びについてまとめます。
「小1起業家」教育によって子供が学べることは以下の通りです。
- 投資の大切さ
- ビジネスの仕組み
- 稼ぐ大変さと喜び
- 学問の必要性
投資の大切さ
子供に投資の大切さを教えるのって、結構難しいと思うのです。「将来1000円の稼ぎを得るために100円使うことが投資。だから投資は大切なんだよ。」とか言っても、子供としてはピンときませんよね。百聞は一見に如かずで、実際に体験したら投資自体も、投資の大切さも秒で理解できます。
お子さんは100円で受講した「おこづかい講座」で得た知識を使い、一時的に100円を失ったけれど、すぐに講座費を大きく上回る収入を得ることができました。これが投資の成功体験となった訳です。もし100円の投資ができていなかったら100円は増えなかったのですから、お子さんは投資の大切さを実感できたことでしょう。
ビジネスの仕組み
ターゲットのニーズを考え、何を提供したらお金を払ってくれるのかを考えたり、逆に自分が提供できるものは何かを考えたり、仕入れ値から売単価を決めたり、収支を計算したり…と、ビジネスの大枠を捉えることができたでしょう。ターゲットの選定や出店場所の検討、販売促進活動など経験していないことももちろんありますが、それでも起業に関する大抵のプロセスは学べたはずです。
しかもねじさんは「困りごと」×「小1ができること」の組み合わせで何をやるかを検討した、ということでした。これは起業する上ですごく重要!
今まで企業で働いてきた人が何か新しい事業などをしようと考える時「こんな未来になったらいいな」から考え始めがちじゃないでしょうか。それが悪いわけではありません。が、起業の観点ではそれ以上に「自分には何ができるかな?」という視点が大切になります。
例えば「将来、高級フレンチのお店を銀座に開きたい」という目標を持ってしまったら、大金をどこからか調達しなければ、とかフランス料理の修行を積まなくては、とかもしくは超一流のフレンチレストランのシェフを引き抜かなくては、みたいな話になりますよね。自分がお金もない、料理の腕前もない、一流シェフの人脈もない、という状態だったら、それらを手に入れるところから始めなければならない。そんなの現実的でしょうか?
そのため自分自身の能力や自分の持っている知識、自分の持っている人脈などを使って何ができるかという考えをした方がより現実的で確実な起業ができるのです。言われてみたら当たり前のように感じるこの原則ですが、自分でやろうとすると結構ハマります。
息子さんが将来「起業したいな」と思った時、この経験を思い出して同じように考えて行動したら、きっと成功するでしょう。
稼ぐ大変さと喜び
100円稼ぐにはコーヒーを10杯売らなくてはなりません。なのでお小遣いとして100円もらうのに対して100円稼ぐのははるかに難しいと分かったでしょう。しかし軌道に乗ったら稼ぎが増えていくし、お客さん(親)の感謝の言葉を聞けたり笑顔を見られたりする。つまり稼ぐ大変さと同時に大きな喜びを感じられたはずです。働くのって悪くないな、と思えたのではないでしょうか。
子供の頃は親の働いている姿を見て、自分が大人になった時の社会人像を描いたりしていましたよね。もし父が早朝に出かけて夜中に帰ってくるようなタイプだったら自分の将来、悲観的になっていたかもしれません。本来ならねじさんのように「働くのって楽しいぞ!」と実際に楽しく働く姿を見せられたらいいんでしょうが、それができる親は少ないと思います。そのため働く喜びを知れるこの経験は、今後の子供の人生においても大きな意義を持つでしょう。
学問の必要性
子供の頃「なんで歴史なんて勉強しなきゃいけないの?」とか思ったことありませんか?そして大人になってから「あれ?歴史って結構大事かも」とか思って勉強してみたことはありませんか?自分が無意味だと感じるものを勉強する時のモチベーションってめちゃめちゃ低いですよね。でもそれが意味あるものだと分かった瞬間、興味が出たり勉強する意欲がわいてくるものです。
この教育では足し算・引き算に加え、まだ小1では習っていないであろう掛け算・割り算までする必要がありました。きっと算数を学ぶ必要性を実感できたでしょう。またコーヒー豆の産地は地理、煎り方は化学、挽き方は物理の話につながります。学校で習う一見不要そうな学問も、必要なものだと気付くことができるでしょう。
まとめ
今回はねじさんの「小1起業家」のすごい所と子供により多くの学びを与えるための親のスタンスについて解説しました。こうして分析してみると、本当にすばらしい教育だと改めて感じます。あまりにも良くできたプログラムなので、アレンジを加えずに全く同じプロセスで真似することをお勧めします!是非ご家庭でもやってみてくださいね。
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